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2019年12月29日日曜日

ベンチグラインダーの砥石ワッシャーを作る(砥石振れの改善)

家のベンチグラインダーは20年くらい前に確か3600円で買ったもので、ずっと砥石の振れが気になっていた。特に右側は、目立て用の三角山、幅狭の砥石が付いていたのだが、振れてまともに使えないので、ドレッサーでフラットに直してある。
ベンチグラインダー

砥石を押さえているプレスのワッシャーの精度を上げたら良くなるか、試してみた。
作ったのはこんなもの。
ベンチグラインダーワッシャー 切削品

元のワッシャーはこれ。
ベンチグラインダーワッシャー プレス品

折角なので、精度よく削れるよう、ヤトイ治具を作ってワンチャックで裏表を削る方法を試した。

まずヤトイ治具の作成。
これはあえてここまでやる必要はないのだが、主軸テーパーに直接勘合させることにする。(一度やってみたかったので)
まず、複式刃物台にピックテストを載せて、送り方向とテーパー角度を合わせる。
複式刃物台と主軸テーパーの平行出し


 その角度でヤトイ治具のテーパーを削る。
MT#1テーパーの切削

テーパーを削るのは初めてなので、テーパーの当たりをチェックしてみる。
テーパー側に光明丹を薄く塗って、 
すり合わせ確認 軸側

主軸に嵌めて当たりを確認。
すり合わせ確認 穴側
きれいに当たっているようだ。

 あとはペーストは拭いて、主軸に嵌めて、ワークとの勘合部(Φ7.5とした)とネジ(M6)を加工。
ヤトイ治具作成 勘合部切削

次、ワッシャーの作成。
スクロールチャックで咥えて砥石側逃げと中心穴Φ7.5を加工。
ワッシャー作成 穴、逃げ切削

チャックをヤトイ治具に入れ替えて、左勝手バイトで砥石当たり面と外周を加工。
ワッシャー作成 砥石当たり面切削


 続いて右勝手バイトでシャフト当たり面を加工。
ワッシャー作成 シャフト当たり面切削
M6キャップボルトの際まで削る。ボルト頭径はΦ10mm強、グラインダーの軸径は実測Φ12.53mmなので、削り残しは後で穴を広げる時に無くなる。

 テーパー加工と面取り。
ワッシャー作成 テーパー、面取り

 4つ爪チャックに変えて逃げの段を咥えて芯出しして中心穴を広げる。Φ12.56mm狙い。
ワッシャー作成 中心穴切削

二枚作って組付けて振れ測定。 
砥石振れ測定

元のワッシャーで振れ全幅約0.6mm、新ワッシャーで全幅約0.2mm。
一桁減を期待したのだが、そこまではいかない。後はシャフト側の当たり面も修正するといいかも。

後はドレッシングしておしまい。
使いやすくはなった。振動も減った気がする。
そのうち反対側も作ろう。





2019年12月23日月曜日

車修理その3-2 スプリング圧縮工具とすり割りクランプ広げ工具を作る(PEUGEOT206SW)

こんなものを作った。
Peugeot206SWのスプリング圧縮工具とすり割りクランプ広げ工具
Peugeot206SWのスプリング圧縮工具とすり割りクランプ広げ工具。

Peugeot206のフロントショック/スプリングを外す場合、スプリング長を1G状態程度で保持しておかないと、ロアアームの動作範囲よりスプリング/ショックユニットの自由長が長いので、分解組立に難儀する。サスペンションのスプリング座には穴が開いていて、長ネジ等を通してスプリングを圧縮したままにすることが出来る。引っ張る部材はM6の寸切りボルトで問題ないのだが、上の後ろ側は手が入らなくてナットを押さえに行けない。
そこでどうするかというと、荒っぽくやるならこんな感じ。
Peugeot206SWのスプリング圧縮工具 荒っぽい版

寸切りボルトをバーナーで炙って焼きなましてからバイスに咥えてハンマーで叩いて折り曲げて引っ掛けを付けて、曲げて太った部分をグラインダーで削り落とす。インシュロックで留めているのは引っ掛けの外れ止め。

Peugeot206SWのスプリング圧縮工具使用例

馬を掛けた状態でブレーキディスクにジャッキを掛けて1G状態程度まで押し上げておいて、上側のスプリング座に寸切りボルトを引っ掛けて下側をナットで留めておく。

上側の外れ止めの状態。 
Peugeot206SWのスプリング圧縮工具荒っぽい版抜け止め
長穴で寸切りボルトがずれないように丸棒を詰めておく。外れ止めが無いと、うっかりすると引っ掛けが外れる。(1回やった)

これはどうもあか抜けない、と思っていたら、ネットでこれ用のSSTの記事を見つけた。これはいいね、とまねして作ってみた。
作り方は、なんてことない旋盤とフライスの加工。手持ちのSUM22Φ10棒材で作る。製作過程は省略。
Peugeot206SWのスプリング圧縮工具切削完


同じ記事に出ていたのがナックルのショックユニットを受けるすり割りクランプを広げる工具。すり割り部に長方形断面の棒を入れて回転させて広げるものらしい。
これはすばらしい。前回はナックルをハンマーで叩いて抜いていた。こんな荒っぽいやり方はできればしたくない。これも作ってみる。

こちらはSK3で作って焼き入れすることにする。長方形ではなくて、丸の2面カット形状とする。まずは旋盤でブランクを作って、
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具旋盤加工完

フライスに載せて六角を削り、 
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具六角部フライス加工

ひっくり返して2面削り。 
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具2面部フライス加工

削り完了。 
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具切削完

バーナーで炙って水で冷やして焼き入れ。 
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具 SK3を焼き入れ

焼き入れ完了。
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具焼き入れ完

表面を磨いて、
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具 酸化膜を磨き


もう一回バーナーで炙って焼き戻し。
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具 焼き戻し完
焼き入れの時よりそっと炙って、全体が濃い茶になったところで完了。(260℃くらいか)

これをこんな具合に使うわけだが、
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具 使用状態

最初、2面幅をボルトが締った状態で測って6mm、円筒部をΦ7mmで作ったら掛かりが浅すぎてほとんど広がらない。再度、ボルトを外した状態で測って2面幅7.5mm、円筒部10.5mmとしたら、今度は2面幅はいいが円筒部が大きすぎて回せない。

無理するとナックルを壊してしまいそうなので、円筒部を再度削る。
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具 寸法調整

 さすがに焼きを入れた工具鋼は硬い。いままで家の旋盤で削った中で一番硬いんじゃなかろうか。超硬のバイトをきちんと研いで、取り代0.025mmで削る。3100rpmで直径を10mmとして切削速度は100m/minくらい。削っている途中で刃がへたってきて、刃の食い込みが怪しくなる。刃を研ぎながら直径0.5mmづつ落としては試して、結局Φ9.5mmで角部をダイヤモンドヤスリで丸めてOKとした。
Peugeot206SWのすり割りクランプ広げ工具 完成品


で、使ってみると、これはすごく良い。先のスプリング圧縮工具を掛けておけば、ショックユニットをぐりぐり回しながら手で抜ける。こうでなくちゃね。

スプリング圧縮工具の方はこんな感じ。
Peugeot206SWのスプリング圧縮工具 使用状態
写真は上側スプリング座と工具のおさまり。座の当たり面が殊の外狭くてRになっているのでちゃんと収まっていない。回り止めの四角部分も効いていない感じ。これでは傷がついちゃうし。次開けるまでに作り直そう。

で、今回何をしたかというと、、、
家の206は、微妙に右に曲がる癖がある。なんとかならないかとずっと考えていたのだが、前回フロント回りを整備したとき、右の車高が左より10mm程低いことを見つけた。
どうもスプリングがへたっているようでもある。で、一回左右のスプリングを入れ替えてみようと思った次第。実際分解して測ってみると右のほうが10mm程度短い。
今回作った工具を使って分解、左右のスプリングを入れ替えてみた。
結果、まだ右のほうが5mm程低い。走らせてみても、良くなったような、変わらないような。うーん、次はリアをいじってみるか。

関連記事:車の修理3題 その3-1 ストラットアッパーマウント交換(PEUGEOT206SW)




2019年12月17日火曜日

テーパー抜き用CAP再製作

こんなものを作った。
フライスMX-20主軸テーパー抜き用キャップ 工具を掛けた所
フライスMX-20主軸のテーパー抜き用キャップ。

キャップを外した所。 
フライスMX-20主軸テーパー抜き用キャップ 外した所


以前作ったテーパー抜き用キャップを使っていて、使い勝手が悪い所に気付いた。
MX-20の主軸はほぼボール盤のような構造になっていて、ハンドルで主軸が上下できるようになっている。ところが、以前のキャップを主軸の上端に取り付けると主軸プーリーにつっかえてストロークが取れない。普段エンドミルを付けて使う分には関係ないが、ドリルやタップを付けてZ軸を手送りするとあれ?となる。
フライスMX-20主軸テーパー抜き用キャップ 以前自作したもの

ストロークが欲しい時にはキャップを外せばいいのだが、ボルトが沢山あって手間なので、キャップを作り直すことにした。
フライスMX-20主軸テーパー抜き用キャップおよびスリーブ 部品単体

キャップ(左)とスリーブ(右)の2ピース。スリーブを主軸穴に接着して、キャップをねじ込む。キャップ外径は主軸外径より細くして、主軸が下がったときも主軸プーリーに当たらないようにした。
ねじ部はM17P1.5左。ネジの谷径はドローボルト頭径より大きくないとキャップがはまらない、山径は主軸のスプライン谷径より小さくないと、分解するときプーリーが抜けなくなる。ねじは左ねじにしないと、ドローボルトを緩めて突っ張らせる時に共回りする。こんな変なねじもミニ旋盤で切れちゃうのは面白い。
ドローボルトはΦ9.8、主軸の穴はΦ11.42程度。ここに入るようにスリーブを作ると、穴径Φ10、軸径Φ11.40として肉厚0.7mm。結構薄いので、強度が足りるかどうか計算してみた。

フライスMX-20主軸テーパー抜き用キャップ強度計算




































ドローボルトの締付トルク(実際には緩め方向だが)は、レンチ有効長130mm、きつく締まっている時の緩め力の手勘10kgfより仮定。
そうすると、ドローボルトの軸力が6800N程度。ここから4パターンの強度を計算した。
(1)M17ねじ部のせん断
ねじ勘合長5mmとして、有効径にせん断力がかかるとした。S45Cの標準降伏点345MPa(この数字はちょっと怪しい気もするが)で安全率9.9。余裕だね。
(2)キャップ強度。キャップ断面積(外径Φ21内径Φ17)の断面積で引っ張りを受けるとした。安全率6.1。これも余裕。
(3)スリーブの接着強度
接着長20径Φ11.4として、嫌気性接着剤LOCTITE638の対鋼せん断強度と比較、安全率3.0。まあこんなもんでしょう。あまり強すぎると外したくなった時困るし。
(4)スリーブの筒強度
これが問題。外径Φ11.4内径Φ10の断面積で引っ張りを受けるとして、応力320MPa、これは中々大きい。安全率2は欲しい、とするとS45C生材では厳しい。熱処理しようかとも思ったが、自信がないので、何かないかな、と考えると、家にSCM440調質の端材があった。耐力900MPa程度。これなら安全率2.7とれる。

以下製作工程
まずスリーブから。
端材を4つ爪チャックで咥えてスリーブの軸部を削る。
スリーブの軸部をML-210で削る

硬いは硬いが案外削りやすい。
超硬バイトでガシガシ削ると焼けたキリコがきれい。
SCM-440調質材をML-210で削ったキリコ

軸外径を削ったらドリルで下穴を開けてから中ぐり、面取り。
スリーブの軸部中ぐり

次、ひっくり返してねじ部外周を削る。
スリーブのねじ部外周削り

 おねじ切り。
スリーブのおねじ切り
この時は動力を入れるのが怖くてチャック手回しで切ったが、後でやり直す。

次、キャップ。
外周、内面と削って、 
キャップの外周、内面削り

めねじ切り。 
キャップのめねじ切り
どうも手回しだと切れが悪い。ある程度切削速度があったほうがいいようだ。
で、動力で切ることにした。バイトを穴に突っ込んで、切り込みをかけてから動力ON、バイトが出てきたらSTOP。
主軸500RPMねじ有効径Φ16として切削速度25m/s程度、切り込みは0.025mm/回 程度。バイトはハイス。

スリーブとキャップを現物合わせで入るようにする。
おねじとめねじの現物勘合
本当はスリーブのおねじを仕上げて、それに合わせてキャップのめねじを削るつもりだったが、スリーブのおねじがあまりに太すぎたので、再度めねじに合わせて削るはめになった。

キャップはひっくり返してチャック部分を突っ切り。
キャップの突っ切り
ちょっとびびり気味だったのでジュラコン材を介してセンターで押した。

あとは端面を仕上げて旋盤作業はおしまい。 
キャップの端面仕上げ

次、フライスに移って、頭に四角穴を掘る。
フライスMX-20で3/8四角穴掘り
四角は3/8ラチェットに勘合させるためのもの。まあ普通に使っていて、回すのに工具が必要になることはないと思うが、念のため。

ラチェットがはまることを確認してからチャックを外す。 
四角穴とラチェットハンドルの勘合確認


ドローボルトの頭は長年ハンマーで叩いたので変形して太くなっている。
ドローボルト頭変形状態

このままではキャップに入らないので、旋盤で整える。 
ドローボルト頭を旋盤で修正

後は、フライス主軸の穴内面をペーパーで軽く舐めて、脱脂して、
フライス主軸穴を脱脂

LOCTITE638をスリーブに塗って押し込み、ドローボルトを軽く締めて、軸をヒートガンで炙る。(80℃くらい。接着剤が硬くてなじみが悪そうだったし、気温が低いので硬化時間を短縮したかった。)
スリーブをフライス主軸に接着

後はカバーを付けて完成。軽く動かしてみた感じは、良さそう。ちゃんとトルクを掛けるのは、接着強度がちゃんと上がった、2~3日後かな。
フライス主軸テーパー抜き用キャップ完成状態

12/19追記、ちゃんと締めて、緩めてみた。接着が外れそうな不安感はない。以前のものより緩める時の剛性感が上がって、気分良し。チャックを外すのが簡単になったので、コレットチャックとドリルチャックの差し替えが苦にならない。

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