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2018年9月11日火曜日

ソケットレンチを作る(自転車フロントサスペンションのトップキャップ用)

前回の丸チャッキング冶具(4)の時に一緒に作った工具がある。
自転車サスペンションのトップキャップボルト用、対辺27mmのソケット。
SUNTOUR AION 右トップキャップ部


トップキャップボルトの6角は、一見モンキーレンチで回せそうに見える。
実際やってみると、アルミの六角、高さ4mm程度のこのボルト、回せることは回せるが、角は舐めるは、周囲の塗装は削れるはで、はなはだ具合が悪い。
この場所は、ダンパーオイル交換のため、年に一回くらいは開けたい。
すでに今の6角部はつぶれてひどい状態にはなっているのだが、今回これがうまくいけば、ほかのサスペンションも気兼ねなく開けられる。

さて、工具と六角頭の勘合、なんて、今回初めて具体的に考えた。
いや、所謂面接触ドライブの存在は知っていたが、自分で寸法を決めるとなると、ちょっと話が別。
取り合えず、工具とワークのクリアランスを片側0.05mm、角部の逃げをR0.75とR15の複合カーブにしてR15部をワークに当てる設計とする。これでワーク寸法が対辺27mmジャストの時に角から約2mmの位置を中心に接触することになる。
フロントフォークトップキャップ用ソケット27mm図面

ソケットレンチだから反対側は四角穴。これは前からやってみたかった。
これができれば色々と応用が利く。
手持ちの工具、実際に使うトルクに合わせて3/8SQとする。
こちらも単純な四角穴ではなく、面接触ドライブで。
寸法はJISB4636を参考にしながら手持ちの工具の実寸で決める。

まずは旋盤で、A7075の棒材からブランクを削る。

フロントフォークトップキャップ用ソケット27mmブランク作成
















ブランク完成。六角側。
フロントフォークトップキャップ用ソケット27mmブランク完成六角側から


















3/8SQ側。
フォークトップキャップ用ソケット27mmブランク完成四角側から


















今度はNCフライスに載せて、先ずは六角部荒取り、Φ3エンドミル。
フォークトップキャップ用ソケット27mm六角穴掘り荒取り

















仕上げはΦ1ロングネック。
フォークトップキャップ用ソケット27mm六角穴掘り仕上げ


















ひっくり返して四角穴部を同じくΦ3-Φ1で削る。
フォークトップキャップ用ソケット27mm四角穴掘り


















完成。四角穴側。
とりあえず、ボール用の凹は無し。
フォークトップキャップ用ソケット27mm完成単品



















ラチェットハンドルと組合せるとこんな感じ。
フォークトップキャップ用ソケット27mm完成ラチェットハンドルと組み合わせ

六角側。
フォークトップキャップ用ソケット27mm完成ラチェットハンドルと組み合わせ六角側

実は、六角側の面取りでZ原点設定を間違えて刃物をめり込ませてしまった。
見るたびに悔しい。まあ、そのうち作り直そう。
フォークトップキャップ用ソケット27mm使用状態
具合は、すこぶる良い。六角が舐める不安は全くなく、気兼ねなくトルクがかけられる。対辺寸法の割に高さが低いのも、トルクをかけやすくてGOOD。アルミだから軽いし。
耐久性は不明。対アルミ専用工具だから、工具の持ちより当たりの柔らかさを優先、とする。角ドライブ側の耐久性は使い込んでのお楽しみ。へたるほど使い込むとも思えないが。
面接触ドライブの効果は、元からワークが痛んでいるのでよくわからず。
他のサイズも作って、まだ触っていないサスペンションで試してみることにする。

2018年9月4日火曜日

丸パイプチャッキング冶具を作る(その4 改良版と周辺工具作成)

Φ20パイプ用に、バイス当たり面に逃がしをいれた改善版チャッキング冶具を作ってみた。
材料はA2017 t=12mmの端材。
フライスで外周を削って、



旋盤で中ぐり。



逃がしはこんな感じ。内幅20mm、深さ0.2mm



これをメタルソーで2つに割って、



バリを取って出来上がり。



これで、ダンパーユニットの下側蓋を回してみる。
先ずはモンキーで。結構固い。
チャッキングの具合は良いようだが、結構強く咥えても、滑る。
脱脂して再トライ。
アルミナットの角がつぶれそう。
17mmメガネに替えてみる。
丁寧に扱ったつもりなんだが、結局、レンチが浮き上がって角がつぶれた。



全くお恥ずかしい。もうしません。ごめんなさい。
そもそも一般の工具は、面取りが大きくて、こういう薄い六角頭には向かない。
分かってはいたんだけど。
メガネレンチのヘッド部はこんな感じ。














これは、KTCの旧型17mmコンビネーションのメガネ側だが、
KTCが悪い訳ではなくて、どこでもこんなもの。

ということで、これも、作りましょう。
材質は、しばし迷った挙句、38X3の鉄フラットバー、ユニクロメッキ付き。
手持ちがあったので。












Φ5エンドミルで荒取り、Φ2エンドミルで仕上げ。
形状は、対辺17mmにクリアランス片側0.05mmを付けて、面接触型に角部を処理。

出来上がり。
何だか、棚を買うとおまけについてくる板レンチみたいだ。

先程の丸パイプチャッキング冶具と合わせて、万力で咥えて回す。

今度は万力が持っていかれる。

しょうがないので、フライスに載せてミーリングバイスで咥える。

今度はもう、拍子抜けするぐらいあっけなく回る。
こうでなくちゃね。

外れた外筒側。
ネジロック剤は入ってないね。

こちらが蓋とピストン。

これはピストンを上から見たところ。
中心が伸び減衰調整用のオリフィス部。
周囲の円弧穴は圧縮リリーフバルブ。

今回は中が見たかっただけなので、洗ってそのまま元に戻す。

六角の潰れた部分より内側に、黒く光っている部分が、たぶんレンチの当たり面。
思ったより内側にきた。
角を潰さずに回せたので、実用上はOKなんだが、この接触痕をどう見るか?
アルミ頭にはアルミのほうがいいのか?

今回の結論。
六角頭だといって、汎用工具で回せると思っちゃいけない。
アルミの薄頭にはそれ相応の工具が必要だ。

で、それはNCフライスを持っていれば作れちゃう。
ボルトヘッドとのクリアランスもツールとヘッドの接触点の設計もお好み次第。
この辺の話はまた別途。