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2019年12月10日火曜日

自転車リアショックメンテナンスその2(CaneCreekDBinline)

この記事は7月にはあらかた仕上げた状態でUPしたつもりで忘れていたものを、ちょっと手を入れてUPする。このショックユニットは19年12月現在お休み中で、今は自転車(MONKEY18K)にはサンツアーのユニットが付いている。

前回、オイル漏れのあったCanecreekリアショックユニット、そのまま戻して暫く乗っていたが、今一つ機嫌が悪い。オイルが漏れたアジャスター廻りもオイルがにじんでいる。
Oリングも届いてるし、そろそろ開けて見ることにする。今回は追加で工具を用意したので、シリンダー部まで分解洗浄する。
Canecreekリアユニット アジャスター部


 エアスリーブを抜いたところ。
なんだかやけにオイルまみれだ。ピストンシールからもオイルが漏れているかも。
Canecreekリアユニット エアスリーブを抜いた状態


 ガスチャンバーを開けたところ。
Canecreekリアユニット ダイヤフラム部

かなりオイルが減って、ダイヤフラムが内部に貼り付いている。破ける前に開けて良かった。

 オイルをこぼして、ピストンロッドからアイレットを外し、エアチャンバー外筒をはずしてから(写真は無し。その1参照)ピストンヘッドを外す。
Canecreekリアユニット 内側エアシール


ピストンヘッド分解
Canecreekリアユニット シリンダーヘッド取り外し


前回開けた時に測った寸法で作っておいたピンスパナでヘッドを回す。
結構トルクが掛かっていて、どうやって外すか色々試した末、ピンスパナをバイスで咥えてシリンダーをベルトレンチで外すことにして、無事緩んだ。緩めトルクは大きいが、ここはネジロックは入っていない。
シールヘッドを抜く時は、シールに傷をつけないように、ピストンロッドのネジ部にテープを巻いておく。
Canecreekリアユニット ロッドネジ部の養生

 分解したピストン
Canecreekリアユニット ピストン取り外し

ピストンヘッドの拡大図がこれ。
Canecreekリアユニット ピストンヘッド部拡大図

皿ボルト1本でピストンとシムリングを押さえている。
さて、よく観察すると、シムとピストンの間に何か削りかすのようなものが挟まっている。(右側の穴の右中央)ほかにもなんか大きなごみが付いている。はさまっているのは青いので、どうもピストンリングらしい。これが挟まるということは、ピストンリングが削れたのは分解したときではなくて動いている時、という事になる。ここはダンパーの中でも繊細な部分で、ここにこのサイズのごみが挟まるのはバルブがきっちり閉まらないことになって、かなりよろしくない。シムまでばらして洗うことにする。

このショックユニットはツインチューブなので、名の通り筒が二重になっている。
今回、できるだけばらして洗うつもりなので、ここも分解する。

Canecreekリアユニット アウターチューブ取り外し

構造が読めないので暫し悩んだが、筒にベルトレンチを掛けて本体を手で持って回したら簡単に取れた。


分解したところ。
Canecreekリアユニット アウターチューブ分解状態
筒の外側にOリングがあるだけで、ネジ等はなし。


筒には方向性があって、ピストンヘッド側は内側の面取りが大きい。
Canecreekリアユニット アウターチューブ方向確認(ピストンヘッド側)


反対側の面取りは小さい。
Canecreekリアユニット アウターチューブ方向確認(アジャスター側)


次、ピストンヘッド部を分解する。
ピストンヘッドを横から見た図
Canecreekリアユニット ピストンヘッドを横から見た図
シム径は、ピストンに接しているものが一番大きくて、順次右に向かって小さくなり、再度大きいものが入っている。再度大きくなった部分は減衰には効かないと思う。セッティング用部品が最初から入っているのか?

ピストンロッドを咥えてトルクス穴の皿ボルトを緩める。
Canecreekリアユニット ピストンヘッド分解
ここは結構固い。ネジロックが入っていた。


外したピストンヘッド。写真はシム側から。
Canecreekリアユニット ピストンヘッド単体

拡大図

Canecreekリアユニット ピストンヘッド単体拡大図

アルミの切削にアルマイトが掛かっている。当たり面は平面で、逃がし等はなし。
穴の周囲が結構痛んでいる。ここはキャビテーションで耐久性が厳しいところとはきいていたが、ほんとだ。そのうち鉄でつくるかな。

分解したピストンヘッド部の部品一式
Canecreekリアユニット ピストンヘッド部品一式

シャフトのピストン取付部拡大。
Canecreekリアユニット シャフトのピストン取付部拡大図

Cリングをピストンの止まりにしている。Cリングがシャフトに食い込んでいるんだが、、、初期組立時のオーバートルクか?

アジャスター廻りも分解洗浄
Canecreekリアユニット アジャスター廻り分解図

Oリングは新品交換した。
後は元通り組み立ててオイルを入れてエア抜いておしまい。


2019年12月9日月曜日

チャック取付アダプターを作る。

先週の、ハブ用玉押し調整工具の六角切削がずれちゃった件を受けて、旋盤チャックをフライスに確実に固定できるよう、チャック取付アダプターを作った。
チャック取付アダプター完成状態

チャックを付けるとこんな感じ
チャック取付アダプター チャック取付状態


ML-210のオプションにチャック取付アダプターは存在したが、持ってないし、もう生産終了だし、センター穴が深めのが欲しかった。

ちなみに、これまではこうしていた。
従来のチャック固定方法
だめじゃないけど、押さえる位置がオフセットしているので強く締めると傾きそう。緩いとすべる。途中で旋盤工程が入るとフライスの芯出しはやり直しになる。

以下製作工程。
S45C黒皮Φ42の手持ちがあったので、金鋸で切って黒皮のまま4つ爪チャックで心出しして下側を切削。
チャック取付アダプター本体切削(旋盤工程1)

ひっくり返して、チャックとの勘合部と内側穴を切削。
チャックとの勘合は、チャック側穴径がスクロールチャックΦ22.020、4つ爪チャックΦ22.012だったので、ジャスト22.00で仕上げる。(爪の当たりを修正してから、こういう精度が出しやすくなった。)

チャック取付アダプター本体切削(旋盤工程2)

もう一回ひっくり返して穴の底の削り残した部分を落とす。(前工程できわまで削るとチャックも削っちゃうので)
チャック取付アダプター本体切削(旋盤工程3)

フライスに載せて、下穴、面取り、M4タップ。
チャック取付アダプター本体切削(フライス工程)

スクロールチャックはPCD28、M4X3穴、4つ爪チャックはPCD35、M4X4穴。
XY方向の芯をだして、穴位置でM0で止めて、Z方向は手動送り。
今回、PCDと穴数をパラメータで指定すると分割した座標で順番に止まるプログラムをつかった。
このプログラムはショックユニットのレンチを削るときに作ったものにちょっと手を入れた。この手の汎用プログラムを作っておくと、仕事が早い。その件はまた別途。

タップは最後まで動力で切るのは折れそうで怖いので、入り口だけ切って後から切り足す。
チャック取付アダプター本体切削(タップ 仕上げ)

後はネジの貫通部のバリを取って本体完成。

折角だから、使い勝手がいいように保持金具も作る。
端材を漁るとSCM440のブロックがあったので、外周を整えてから下穴を開けて、
チャック取付アダプター固定金具切削(工程1 取付穴下穴加工)

取付穴をエンドミルで掘って、
チャック取付アダプター固定金具切削(工程2 取付穴エンドミル加工)

中心に分割用の穴を開けて、
チャック取付アダプター固定金具切削(工程3 ブランク分割用穴開け)

メタルソーで切断 
チャック取付アダプター固定金具切削(工程3 ブランクをメタルソーで分割)


テーブルを削らないよう、アルミの端材を下に敷いて固定して平行を出して、
チャック取付アダプター固定金具切削(工程4 外周加工用平行出し)

外径をエンドミルで削る。
チャック取付アダプター固定金具切削(工程5 外周加工)

クランプとエンドミルが近いので慎重に動作確認する。
粗取りと仕上げの2パスで削った。

エッジを落として出来上がり。
チャック取付アダプター部品一式

しっくり止まって気分良し。
チャック固定状態




2019年12月2日月曜日

15MMアクスルハブ用玉押し調整工具を作る

こんなものを作った。
15MMアクスルハブ用玉押し調整工具完成状態

自転車フロント用15mmアクスルハブの軸を内側からチャックする工具。
分解状態はこれ。

15MMアクスルハブ用玉押し調整工具分解状態

ハブに取り付けた状態はこれ。
15MMアクスルハブ用玉押し調整工具取り付け状態

さて、なんでこんなものが必要になったかというと、
ちょっと古いシマノの15mmスルーアクスルハブ(家のはHB-M778)の軸は、左側の軸側ボールレースが軸に圧入されていて、右側の軸側ボールレースはシャフトにねじ込んでロックナットで押さえて、その上にアルミのエンドキャップをかぶせる構造になっている。

右側
ハブHB-M778 軸右側


左側
ハブHB-M778 軸左側

ハブHB-M778 シャフト周り部品


これをグリスアップのため分解する場合、右側エンドキャップをマイナスドライバー等でこじって外して、23mmのコーンレンチと22mmスパナorモンキーレンチで分解できる。これを組み立てる際、シャフト側にはスパナを掛ける部分が無いので、ボールレースとロックナットの締め合わせだけでベアリング予圧を調整してロックしなければいけない。最後にぎゅっと締める時に、シャフトが右ボールレースについて回るかロックナットについてまわるか確定しないので、調整を追い込むのが難しくて、結局ガタガタになるかゴリゴリになるか、どちらかでお茶を濁すことになる。
K-エンヂニアリング的には、調整技術を磨くよりは工具を作ってしまえ、という事になる。本当は、シマノがハブ軸にスパナを掛けるカットを入れてくれればよかったんだが。


今回作った工具でのハブ玉押し調整方法は、
1.ボールレースをややガタがある状態に取り付けて、ロックナットを緩めに締める
ハブ玉押し調整手順1.



2.調整工具を取り付ける。
ハブ玉押し調整手順2.


3.調整工具をスパナで押さえて、ロックナットを締めこんで予圧がジャストより気持ち重めに締める。
ハブ玉押し調整手順3.


4.ボールレースをコーンレンチで押さえてロックナットをモンキーレンチできっちり締める。
ハブ玉押し調整手順4.


ものの数分でぴったり調整できる。

因みに新しいハブの軸部はこんな格好をしている。写真はHB-M8010。

右側
ハブHB-M8010 軸右側

右側、プラスチックキャップを外したところ
ハブHB-M8010 軸右側 プラスチックキャップを外した状態


左側
ハブHB-M8010 軸左側

左側のシャフト端にはレンチ用カットがあり、右側のボールレースとシャフト端キャップが締め合わせで固定されているように見える。ちゃんと直してきてるじゃないか。22mmのコーンレンチは持っていないので、グリスアップが必要になるまで開けない。

以下、工具の製作過程。ボディ、コレット、コーンの3部品をワンチャックで削る。

シャフト内面との勘合部を削って、
玉押し調整工具製作工程1.勘合部切削

コーンのテーパーを削り、 
玉押し調整工具製作工程2.コーンのテーパー切削

ネジを切って、 
玉押し調整工具製作工程3.コーンのネジ切削

突っ切り。 
玉押し調整工具製作工程4.コーンの突っ切り
チャックの爪を修正してから、突っ切りが安定するようになって気分がいい。(ミニ旋盤スクロールチャックの修正)ワークの支持剛性は重要。


穴を開けてからコレットのテーパーを片側削って、
玉押し調整工具製作工程5.コレットのテーパー切削

溝を掘って、
玉押し調整工具製作工程6.コレットの溝切削

突っ切り。
玉押し調整工具製作工程7.コレットの突っ切り

ボディのテーパーを削って穴を開けて、 
玉押し調整工具製作工程8.ボディの穴開け

ひっくり返してキャップスクリューの沈み穴を掘る。
玉押し調整工具製作工程9.ボディの沈み穴切削

さっき突っ切ったコレットの反対側のテーパーを削って、 
玉押し調整工具製作工程10.コレットのテーパー切削


ボディとチャックをフライスに載せて六角を削る。
玉押し調整工具製作工程11.ボディの六角切削
 六角は前にパラメータ駆動の汎用Gコードを作ってあったので、簡単。
ところが、削っているうちにチャックがずれて、段ができてしまう。もう一回作り直したもんだか5分くらい考えたが、まあそんなに使うものでもないし、そのまま行くことにする。
芯を取り直してそのまま削る。
今度、チャックをフライステーブルに固定する治具もつくらなきゃいけないなぁ。

バイスに乗せ換えてメタルソーでコレットを3つにカット。
玉押し調整工具製作工程12コレットの切断

メタルソーも前は苦手だったんだが、フライス主軸をメンテナンスしてから安定して切れるようになった。(フライスXH-20主軸のメンテナンス
あとはバリを取って完成。こういった組み合わせ物を作るのは結構楽しい。
まあしかし、シマノが構造を変えてきてるので、旧型対応のこの工具は、3回使えばいい所か。