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2019年3月3日日曜日

リアショック分解ツールを作る(CaneCreek DBinline)

CaneCreek DBinlineのエアチャンバー部ナットを回す工具を作った。

CaneCreekDBinline分解工具

CaneCreek DBinline(MTB用リアショックユニット)をものすごく気に入っている。

スムーズな動作とダンピングのレスポンスの良さ、ダンピングの速度特性の良さ。
ああ、いいショックってこんななんだ、と思う。

一方でこのショックユニット、信頼性に問題あり。
インターネットで調べるとこのユニットの問題点は大きく2つ(のようだ)。
①エアチャンバーのダイヤフラムがオイルの流れに引き込まれてバルブ本体に接触して切れる。
②ピストンロッドのスライドブッシュの耐久性が不足していて、特にショックユニットにかかるサイドロードが大きい場合、早期に破損する。
この2点は自然切替で対策が打たれているらしい。

情報源は例えば下記

これを承知で、NETで叩き売られているDBinlineを買って3か月、オイルにエアが噛んだ。
エアが噛むと、まるで砂を噛んだようにがりがりした感触になる。
ああ、来た来た、と分解する算段を始めた。

CaneCreekDBinline取り付け状態

先ずはガスチャンバーを開けてダイヤフラムの損傷を確認することにする。
このためには、トップキャップ部の異形ナット(120°位相×3連凹)を回す必要がある。
はなからスパナを作るつもりではいたが、はて、どうやって寸法を測ろうか?


CaneCreekDBinlineトップキャップ側から

しばし考えて思いついた方法はこれ。
①手持ちのドリルを凹部に当てて、凹Rを推測。
②凹Rに合うピンを2個作成。
 手持ちのドリルロッドを切って端面を旋盤で整えた。
 いつもの、何てことない削りシリーズ。

CaneCreekDBinlineナット寸法測定用ピン

③ピンを凹部にグリスで貼り付けて、マイクロメータでピッチを測定。
 前にヤフオクで買った25-50mmの外側マイクロメータが初めて生きた。

CaneCreekDBinlineナット寸法測定方法

測定値からピン直径を引いた値がピンのピッチとなる。測定値をCADで円周上に並べれば、ピッチ円と角度が分かる。


後は形状を決めてデータ作って削るだけなんだが、材質をどうするかで散々迷った。結果、初体験のMCナイロンを使うことにした。素材は、前に、知り合いの機械加工工場の素材市で分けてもらったもの。上手くいけば、アルマイトに傷を付けずに回せて良いのだが、樹脂が負けそうで怖い。なるべく剛性が取れるように形状を工夫する。

加工条件はF300~450、切り込み2.5mm、回転数はΦ5エンドミルで1600rpm、Φ3エンドミルで2000rpmと、アルミの時より送り、切り込みは大きめ、回転数はやや抑えた。(数字は感覚のみで決めており、根拠はなし)

CaneCreekDBinline分解工具作成

完成。しっくりはまって、強めのトルクでも工具が負ける感じはない。
異形ナットを回すときは写真と違って、トップキャップのアイレット部をバイスで咥える。

CaneCreekDBinline分解工具勘合状態

異形ナットも無事外れた。
オイルはまだ全然きれい。

CaneCreekDBinlineトップキャップを外した状態


左が異形ナット、右上がダイヤフラム、右下がトップキャップ

CaneCreekDBinlineエアチャンバー部品

ダイヤフラムはドーム型の噛み込み対策品が付いている。
ダイヤフラムの表面は傷が何か所かついているが、貫通はしていない。

CaneCreekDBinlineエアチャンバーダイヤフラム


そうすると、エアはどこから入ったのかな?
原因究明はちょっと置いておいて、一旦エア抜きして組みなおすことにする。
弄り壊しちゃうと何が起きていたのか分からなくなるので。

再組立手順は以下
①元のオイルを排出→新しいオイルを上から注ぐ→あぶくが出なくなるまでユニットを往復運動させる(しつこくしつこく)
そーっとストロークさせないと油鉄砲となってオイルが天井まで飛び散る。


CaneCreekDBinlineオイル交換


②エアが入らないようにオイルをあふれさせながらダイヤフラムをはめる。
エアが入らないようにするのは当たり前として、ダイヤフラムの外周をきちんと本体溝に嵌めるのは結構難しい。一回バイスから本体を外して全周確認したほうがいい。

CaneCreekDBinlineエアチャンバーダイヤフラム取り付け状態


③蓋を閉める。
蓋を閉める時はトップキャップ側をバイスで固定する。
今回、アジャスターが横向きになるように組んでみた。今のフレームだとその方が使いやすい。

CaneCreekDBinlineトップキャップ締め付け作業


④ガスチャンバーを加圧する。
ガスチャンバー部のバルブの構造は、穴の奥にゴム栓(右)、その手前に穴の開いたイモネジ状のキャップ(左)が入っていて、ゴム栓に針を刺して加圧して、キャップを締めこんで穴を塞いでいる。
CaneCreekDBinlineエアチャンバーバルブ

エアを入れる為には、穴の開いた4mmの六角レンチが必要。
焼きなましてドリルで貫通穴を開ける。

CaneCreekDBinlineエアチャンバー加圧用穴あき六角レンチ


六角レンチに、ボールに空気を入れるニードルを差して、サスペンションポンプで加圧する。ニードルはうっすらグリスを塗っておく。
圧は今回、15kg/cm2とした。(根拠はなし。キャビテーションが起きないように押さえておけばいいのでそんなにシビアな調整は要らないかな、と想像)本来ここは窒素ガスを入れるが、まあ、良しとする。

CaneCreekDBinlineエアチャンバー加圧用工具


キャップをしっかり締めこんでおいてニードルをゆっくり引き抜いて、後キャップをさらに増し締め。
CaneCreekDBinlineエアチャンバー加圧


取り合えず正常に動くようになったが、エア噛み原因は分からず。
出先で壊れるのがちょっと不安。当分スペアのユニットを持って走ろうかな。




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