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2019年1月30日水曜日

ディスクブレーキホースのコネクターインサート圧入工具を作る

ここの所ディスクブレーキホースをいじる機会が何回か続いた。(自転車)
自転車のディスクブレーキのブレーキレバーにブレーキホースをつなぐ部分は、樹脂のチューブの端にコネクターインサートなる金属パイプ芯を入れて、外側からオリーブでカシメる構造になっている。
この、コネクターインサートがちょっと難題で、シマノの添付マニュアルでは、ブレーキホースを樹脂冶具を介して咥えてコネクターインサートをハンマーで叩いて入れることになっている。
叩くのって、いやじゃない?
自転車に組み付いたホースの端を万力で咥えるのも作業しにくいし。
で、挿入工具を作った。

ディスクブレーキホースのコネクターインサート圧入工具


右側のネジを締めてホースを咥えて、真ん中に見えるインサートを左側のネジを回して押し込む。ネジとインサートが回転して擦れるのが嫌だったので、回転止め付きのシリンダーを追加している。

分解図はこちら 
ディスクブレーキホースのコネクターインサート圧入工具分解状態


上右がブレーキホース、その左隣がコネクターインサート。
本体とクランプはA2017 t10 シリンダー部はSUS303?ネジは有り物、ハンドルはMONOTAROのノブスター、全部手持ち材料で賄えたのがおかしい。SUS303ロッドなんて、確か中学生の頃に近所の東急ハンズで買ったもの。

製作途中で自転車仲間に話したら、ありますよ、プラスチックのやつが、とのこと。
うーん、まあいい、もう作り始めちゃったから。

ホースの把握力とか、インサートの圧入力とか、作業性とか、ホースに傷が入るんじゃないかとか、色々心配したけど、杞憂だったようで、簡単に入る。ホースを咥える時の剛性感がいい感じ。圧入するネジは、力は要らないけど回転数が多くてややかったるい。他にも、もう一回つくるなら改善すべき点はあるけど、まずはこんなもんじゃないかな。

改めて、シマノのHPからDealer'sManualを見てみた。(DM-GN0001-22-ENG)
ふーん、なるほど。TL-BH62なる工具がある。ホースカッターも付いてる。
アマゾンで7000円くらい。
作ってから見ると、答え合わせみたいで面白い。他にも、コネクターインサートは2種類あるらしい、とか、オリーブの外周面にはシマノグリスを塗る要求がある、とか、新たな発見があった。この手のマニュアルは時々チェックしないとね。

2019年1月27日日曜日

NC旋盤もどき#2(フライスの主軸にワークをチャックして旋盤として使用)

チップホルダー製作に当たって新テクニックを試した。
前に書いた、フライスを使ったNC旋盤もどきの別バージョン。
今回はフライスの主軸にワークをチャックしてテーブルに刃物を固定するパターン。
やってみると殊の外具合がいい。旋盤ML-210と比べるとフライスMX-20は剛性も主軸出力も全然上だし、コレットチャックもチャッキングの剛性が高くてGOOD。
結果、S45C快削Φ16を80mm程突き出して2500rpm、切込み0.5mmでビビらず削れる。
ちなみに、ML-210だったら、S45CΦ16なら1200rpm、切込み0.2mmくらいがいいところだし、センターを押さずに80mmも突き出すなんて、無理。

写真では、バイスで旋削用バイトを咥えてY軸方向を主軸中心に合わせて、X軸を切込み方向として、外周円筒と凹RをNCで削っている。
フライス主軸にワークをチャックして側面削り


こちらは底面の凹を削っているところ。
フライス主軸にワークをチャックして底面削り



この方法でワークにテーパーが付かないようにするためには主軸とZ軸送り方向の平行度が必要。MX-20では赤矢印のナット3点を緩めると青矢印の向きの角度調整が出来る。
これと直交方向はシムを挟まないと調整できないが、今回の向きでバイトを当てるなら調整不要。
ミニフライスMX-20の主軸傾き調整箇所


調整手順は以下。
 ①とりあえず削る。
 ②マイクロメータで直径を2か所計って差を確認。
 ③差が少なくなる方向に主軸角度をちょっとずらして固定。
 ④①に戻る。

NCデータを作る際は、G18でZX平面を選択して(XY平面指定のままだと円弧切削の向きが違う)座標をXとZで記述する。X座標、Z座標共に正負がひっくり返っているので注意。
最後、M30が入っていれば選択平面はXY(G17)にリセットされる。

今回作ったデータの例。
(いつものことだが、このデータを使って何が起きても責任は取れない。又、データはMach3用であり、他のCAMで動くかどうかは分からない。)

%
G18
G40
G52X0Y0Z0
#2001=150.(F1)
G90G54G92X0Y0Z0
M07
S2500M03
#1001=0.(Offset-start)
#1002=-0.1(offset-step)
#1003=-2.1(Offset-end)
#1004=FUP[[#1003-#1001]/#1002](times)
#1005=[#1003-[#1002*[#1004-1]]](offset-now)
(***GO PASS=fai11.8***)
M98P01L[#1004]
G52X0Y0Z0
G00X1.Z1.
G00X0Y0Z0
M09
M05
M30

O01(***PASS_fai11.8***)
G00X3.1Z4.465
G52X#1005
A#1005
G00X3.1Z-60.814
G03X0Z-55.I3.902K5.814F[#2001]
G01X0Z4.465
G01X3.1Z4.465
#1005=[#1005+#1002]
M99
%

最近の定型パターンで、実際の軌跡はO01以下でサブルーチン化している。
切り込み量はG52で座標オフセットをかけて、オフセット量は#1005でパラメータ指定。
円弧切削でのKの指定(Z方向の円弧中心相対位置)は今回初めて使った。




2019年1月20日日曜日

肩削りチップ用ホルダを作る

肩削り用チップのホルダを作った。
三菱マテリアル APX3000シリーズチップ用。Φ12の1枚刃、突き出し50mmのロングネック仕様。
自作肩削りチップホルダ(三菱マテリアルAPX3000シリーズ用)

肩削り用の平行四辺形チップは各社から出ていて、前から気になっていた。
ソリッドエンドミルの場合、大径(私の感覚では概ねΦ10以上程度)のエンドミルはかなり高価で、かつ刃先が欠けた時の研ぎなおしは取り代が大きいので面倒。
また、この類のチップを使うホルダが作れると、突き出しの長い切削が自由になるので便利そう、等々色々なメリットがある。
チップの切れ刃は曲線になっているので、望みの径の螺旋軌道に乗るようにチップのアライメントを決めてやればいいだろう、という目論見。
一個目はチップの各部寸法をノギスで計ってモデルを作り、
それに合わせて一回ホルダを作って削ってみて、
削れた形状を測定してチップのアライメントを補正してもう一度作る、
という方法を考えた。
ところが、一個目のホルダを作ったところで、三菱マテリアルがチップとホルダの3Dデータを公開していることに気づく。

メーカデータはこれ。Φ12用。

メーカ3Dデータ APX3000R121SA16SA_MR0_4

なんだ、この通りに作れば、と思いきや、どうも様子がおかしい。
メーカデータのチップとホルダの組み合わせを3DCADでチェックすると、側面切れ刃が中凸になっていて、刃先から概ね4mmくらい入ったところの径が最大となる。

メーカデータ確認

うーん、そんなはずはないだろう。これでは削り残しが出てうまくない。
もう少し均一、かつ刃先側が最も削れるようにしたい。

一旦、チップの形状データは正確、ホルダの形状データは信じない、として、チップ刃先が概ねΦ12に乗るようなアライメントのホルダを作ってみる。

削ったホルダ。

自作肩削りチップ用ホルダ#3

チップを付けた状態。
自作肩削りチップ用ホルダ#3チップ付き


A2017の端材を使って、チップの切れ刃が全長当たる状態で側面削りして、ピックテストで凹凸を測定する。
自作肩削りチップ用ホルダ#3側面削り平面度測定







測定結果がこれ。#3となっているのは、これが削った3本目だから。
横軸が半径方向、削れる方向が+。縦軸がZ軸方向。
自作肩削りチップ用ホルダ#3側面削り平面度測定結果


初期 がチップを素直に付けたもの。
これはまたかなりの中凸となっている。先端から4mm近辺で+70μm。
シム追加 は、チップとホルダの当たり面に10μmのシムテープを挟んで刃先側を外に出した場合。Z=1mmで+7μm、Z=2mmで-4μmとなり、切り込み2mm程度なら使えないこともないが、もう少しなんとかならんか?といったところ。

つまり、チップもホルダもメーカの形状データは正確でない、ということになる。
ほんまかいな、とは思うが、削った現物を信じることにして、
側面削りの形状測定結果を元にチップ形状データを補正し、
補正したチップ形状の刃先がΦ12の円筒面に乗るようにホルダ形状を決める。
自作肩削りチップ用ホルダ#4CADによる平面度確認


刃物を先端側から見た図。黄色はメーカのチップデータ、刃先のエッジがピンクの線。茶色が補正したチップデータ、刃先エッジは紺の線。
先端がΦ12.00、そこから若干細くなって、歯の上端がΦ11.96となる設定とした。
もう一回ホルダを削って再トライ。
測定結果はこれ。

自作肩削りチップ用ホルダ#4による側面切削平面度測定結果



今度はチップを付けはずしして4回削ってみた。チップは同一の物。
#3よりだいぶ良くなったが、今度はZ=7mm近辺から半径方向が+側に振れている。
うーん、中々難しい。

下穴を開けてまっすぐ切り込んで、穴径をインナーマイクロで測って刃物径を確認。
結果:Φ=12.15mm

自作肩削りチップ用ホルダ#4刃物径確認

結構大きくなってしまった。切削精度が足りていないんだろうな。

これは側面削りチェックした端材を横から見た所。
上の方が削れ過ぎになっているのが分かる。


自作肩削りチップ用ホルダ#4側面削り平面度確認

さて、この先どうするか。

①同じデータでもう一回ホルダを作る。
②今回の結果を元にデータを修正してホルダを作る。
③チップを修正して使う。

そろそろ飽きてきたので、取り合えず③で行くことにする。
作りたいものもあるし。
根本的には切削精度が足りていないのだと思うのだが、どこを改善すべきかよく見えていないので、もう少し経験を積んでから再挑戦しましょう。

で、チップの上側3mm程度をGC砥石とダイヤモンドヤスリで削って逃がす。
やや白っぽくなっているのが逃がした部分。
自作肩削りチップ用ホルダ#4チップ形状修正



これで、先程と同じように、チップの切れ刃ば全長当たる状態で側面削りして、ピックテストで凹凸を測定した結果がこれ。

自作肩削りチップ用ホルダ#4チップ形状修正側面削り平面度測定結果





概ねZ方向送りピッチを5mm以下にすればなんとかなりそう。
今のフライスの剛性ではアルミの仕上げ切削でも4mm以上は当てていなかったので、これでOK。
2回目だけちょっとずれているのは、意識的にひねって付けてみたせい。チップ取り付け時に気を使わないと精度が出ないようだ。
また、1mmの所が20μm程高くなっているのが気になるが、ここの改善も今後の課題として、今回は目をつぶることにする。

これが切削テストしたブランクの現物。先程と向きが逆だが。
上のほうが微妙に削り足りない傾向。これでOK。
自作肩削りチップ用ホルダ#4チップ形状修正側面削り平面度確認



以上